コミュニケーションの本質「伝える力」

 前回は、争いを避けるために必要なコミュニケーション力の一つ「聞く力」をご紹介しました。当然コミュニケーションは「双方向」ですので、一方的 に「聞いてばかり」でも理解は成り立ちません。今回はそのもう一方の重要な要素である「伝える力」について宇宙的な視点から考えてみたいと思います。

  人間はコミュニケーションを図る時に「言語」を使います。まだまだ地球人のテレパシー能力は発達途上ですのでどうしても言葉が必要です。日本語と英語のよ うな言語の違いによる壁は別として、同じ言語を使う人同士でもコミュニケーションが出来づらく、誤解を生んでしまうことが多々あります。これは何故なので しょうか。話し方の上手下手はありますが、意外と多いのが「自分の言わんとしていることの整理が自分自身で整理できていない」ということです。自分の意思 を伝えるときに「何が言いたいか」を明確にすることは最も重要な要素なのは当然でしょう。しかし「この当然」なことが出来ない人が以外に多いのです。ご自 身を振り返って見て下さい。相手と話しているうちに自分でも何を言っているのかわからなくなることがありませんか。

 宇宙においても地球に おいても、会話、コミュニケーションとは、言語という「記号」をやりとりすることではなく、お互いの「意思」を通い合わせることが目的です。であるなら当 然、その会話には相手に伝えたい「明確な意思」を込める必要があります。テレパシーが発達した宇宙人ならまだしも、地球人はまだまだ意思の力だけでのコ ミュニケーションは難しいので「会話の仕方」が重要になってきます。何しろ、思っていることがそのまま伝わってしまうテレパシーと違い、地球人の会話には 表と裏があるからです。「言っていることと思っていることが違う」。人間ならば誰しも感じることであり、自分自身でもやってしまうことでもあります。しか しながら、やはりこの「表裏がある会話」では相手に信用されにくいことが多いのが事実です。

 それは何故でしょうか。地球人も宇宙の中で進 化を続けている人類です。いずれかはテレパシーが今よりもずっと発達することでしょう。その片鱗が今の人間にもあり、「言葉という記号」には多かれ少なか れ「感情が乗る」のです。ですから本心で会話するのと、表裏があって会話するのとでは、相手に伝わることに大きな差が出てしまうということです。ですから 会話をするときに「何を伝えるか」という意思を持って行うことが相手の理解を得るためには重要なのです。

 会話にはもう一つ大切なことがあ ります。それは「相手に理解して貰おうとして伝えているか」ということです。逆に言えば、「自分の言いたいことを、自分勝手に伝えていないか」というこ と。よく未来創学アカデミーの講義でも、人間の究極の幸せは、「自分のやりたいことが出来ること」であるとお話しています。しかしながら、これが出来れば 人生苦労はありません。ですから次善策としては「出来るだけ、自分のやりたいことをする」ということになります。内容にもよりますが、自分のやりたいこと には大体異論が出ます。それは人それぞれ考え方が違うからです。ですからこの「異論」を出来る限り抑え、自分のやりたいことに近づけることが幸せの実現に は欠かせない、ということになります。であるならば、「自分の言いたいことを一方的に伝える」という会話は良くない方法と云えるでしょう。まず相手の雰囲 気を確かめ、自分の意見が反対されにくいような工夫を凝らして話す必要があります。

 会話というのは、このように実に「気をつかう」行為なのです。

  にも関わらず、社会ではどうでしょうか。皆様個人では如何でしょうか。安易に「言いたいことだけ」を口走ってはいないでしょうか。これが気の置けない友人 同士や家族なら、ちょっと不愉快な会話になったとしても「おっと、ゴメン!」で大方は済んでしまうかもしれませんが、会社において上司との会話などではそ うも行きません。また自分が利を得るお願いごとなら尚更で、相手の機嫌を図ってタイミングよくお話するのではないでしょうか。コミュケーションである「会 話」はこのように、使い方によって便利な相互の潤滑油にもなれば、反対に相手を突き刺す凶器にもなりえることを充分理解し、使いこなす必要があることを肝 に銘じておく必要があるでしょう。

 翻って、昨今の世界を見回せば紛争が盛んに勃発しています。平和な社会の中で考えれば「戦争などという 悲惨なことはやめれば良いのに」と誰しも思います。しかしながら、戦争は歴史上なくなったことはありません。人間の性ともいえる本能なのかもしれません が、宇宙の大きな流れの中で進化している生物として、何とかこれを止める方法に知恵を絞ることも人間として必要です。このような人類の欠点克服は「政治 家」だけが考えることではなく、個人一人ひとりでも小さな部分から方策を積み上げることが効果的なのです。例えばその一つが、今まで申し上げてきた「会 話」=「伝える力」です。国同士の外交においても「自国の利益のみを考えた外交的会話」では相手国を逆撫でするだけで、紛争を招いてしまいます。

個人の会話の原則とまったく同じことなのですが、なかなか「政治家」には出来ないようです。本来ならば言葉のプロであるはずなのですが…。「争い」の原点にはこのように小さな部分、即ち「会話」、コミュニケーションのやり方一つにも原因があるのです。

 これからは「会話」に気を配りましょう。争いを避け、自分の幸せを実現する「会話」を心がけること。

まさにこれが「伝える力」なのです。先日、会員の方とお話をしているときに、紛争の話題になりました。

その方が「戦争をして、殺し合いをして、勝った負けたと言ったって、100年もすれば全員死ぬんだから、無駄なことはやめればいいんだ!」というセリフがある、と教えて下さいました。名言だと思います。

ある小説※の主人公のセリフだそうです。前回のテーマ「聞く力」と合わせ、是非「言葉」は大切にして下さい。

            ※「窓から逃げた100歳老人」 原著:ヨナス ヨナソン、翻訳:柳瀬 尚紀 西村書店刊